居合術考察

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「居合道の手引き」より抜粋

立膝五本目 颪

五本目 おろし(左向立膝)

 意義 浮雲と同様に同方向に並んで座す敵が、我が刀の柄を取ろうとするので、我が柄を左に外づして敵の顔面に柄当をし、敵の退かんとするのを直ちにその胸部に斬り付け、右に引き倒して上段から胴体に斬り下す。

 動作

一、柄 当

 1 左手は鯉口を握り拇指を鍔にかけ右手を柄にかけるや直ちに臀部をあげ、両足を爪立てて柄を少し右に引き下に押し下げつつ左方に逃がす。(急速に動かす。)

 2 左方に逃がした柄は止めることなく半円を描く心(の字を書く心)で上にあげつつ、左膝を軸に右に向き直りつつ右足を踏み込むと同時に、右手を十分伸ばして柄頭で敵の顔面を突く。(鞘共に引き出す。)打ち突くの心。

二、抜き付け

 1 前に突き出した右手はそのままにして左手鞘を刀先が六~七センチ残るまでグッと引いて抜き出し、右手は残る切先を腰を十分左に捻り体を左半身となしつつ、左足も膝頭諸共右足にグッとすり寄せ、右踵に臀部をのせると同時に敵の肩口から胸部にかけ抜き付ける。

 2 この時右足は爪立てて膝頭は浮き左膝は外方四十五度位いに開いて床に着け、左足心は右足踵に接して爪立て臀部は右踵に接着し、右拳は体に近く腕は十分に伸ばす。体は左向きとなり顔は正面敵に向ける。

三、引き倒し

 1 抜き付けた体勢から直ちに、左膝を右足の左側面に進めて(爪先軸に回る)、刀先の方向に体を正しく向けると同時に刀の腰棟に素早く左手をかけて押えつける。

 2 次いで浮雲の引き倒しの要領で、右足を左足に対して右に九十度に踏み開くと同時に、敵体を右横に引き倒す。

四、振り冠り

 1 引き倒した刀は浮雲と同法で右拳を右に返し、左手でパッと右斜上方に跳ね上げると同時に左膝頭を右足心部に引き寄せ、左手は柄を握る。

 2 次に左膝頭と右足先を軸に正面に振り向きながら諸手上段となる。

五、打ち下し

  諸手上段となるや直ちに右足を踏み込み敵の胴体に打ち下す。

六、血振り以下、前業に同じ。

居合兵法極意秘訣 より

大森流居合之事

 この居合と申は大森六郎左衛門之流也
 英信に格段意味無相違故に話して守政翁是を入候 六郎左衛門は守政先生剣術の師なり新陰流也
 上泉伊勢守信綱の古流五本之仕形有と言或は武蔵守卍石甲二刀至極の伝来守政先生限にて絶

この居合(大森流)は、大森六郎左衛門の流派である。英信流に特段違いがない事から、(長谷川英信に)話して英信流に取り入れた。六郎左衛門は守政先生の剣術の師匠であります。新陰流であります。
上泉伊勢守信綱の古流五本の仕形があったと言います。或いは、武蔵守卍石甲二刀の至極が伝わっていたとも言われています。しかし、守政先生の代で絶えました。

初 発 刀

 右足を踏み出し向へ抜付け打込み扨血震し立時足を前に右足へ踏み揃へ右足を引て納る也

左 刀

 左の足を踏み出し向へ抜付け打込み扨血震して立時足を前に左の足へ踏み揃へ左足を引て
納る也

右 刀

 右足を踏み出し右へ振り向抜付け打込み血震納る也

当 刀

 左廻りに後へ振り向き左の足を踏み出し如前

陽進陰退

 初め右足を踏み出し抜付け左足を踏込で打込み開き納又左を引て抜付跡初本に同じ

流 刀

 左の肩より切て懸るを踏み出し抜付左足を踏込抜請に請流し右足を左の方へ踏込み
打込む也扨刀を脛に取り逆手に取り直し納る膝をつく

順 刀

 右足を立左足を引と一所に立抜打也又は八相に切跡は前に同じ

逆 刀

 向より切て懸るを先口に廻り抜打に切右足を進んで亦打込み足踏揃へ又右足を
後へ引冠り逆手に取返して前を突逆手にて納る也

勢 中 刀

 右の向より切て懸るを踏出し立って抜付打込血震し納る也
此事は膝を付けず又抜付に払捨て打込事もあり

虎 乱 刀

 是は立事也幾足も走り行く内に右足にて打込み血震し納る也但し膝を付けず

抜 打

 坐して居る処を向より切て懸るを其の儘踏ん伸んで請流し打込み開いて納る也
尤も請流にあらず此処筆に及ばず

                   以上十一本

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